ホーム>

ニュース


2008年12月23日

「サップvs万太郎は本当にシビアで危険な企画なんですよ」
笹原圭一DREAMイベントプロデューサーインタビュー

12月22日(月)に発表された12・31『FieLDS Dynamite!! ~勇気のチカラ2008~』(さいたまスーパーアリーナ)でのボブ・サップvsキン肉万太郎の一戦。このカードが決定するに至った経緯、企画の真意について記者会見終了後、笹原圭一DREAMイベントプロデューサーに聞いた。【取材日:2008年12月22日】

■「この現状で作り手がビビっていてもしょうがないんです」

──今回の会見では、ボブ・サップvsキン肉万太郎というかなり想像を超えたカードを発表されましたが。
笹原 さっきの会見を見ていてちょっと気になったのは、万太郎マスクのビジュアルのインパクトの強さですね(笑)。もちろん、試合はあれを被って闘うわけではないですから、そこをビジュアルで誤解されると怖いなという印象を少し受けました。
──まず、この一戦が実現するに至った経緯を教えていただけますか?
笹原 おそらく、いろんな意味で反響があるカードだと思いますね。コアな格闘技ファンにとっては、ちょっと受け入れ難いカードだと思うんです。ただ、これは不安を煽るわけではないですけど、一時期の格闘技ブームが絶頂だった頃と比べてみた時に、確実にその人気が下がっているというのが現状なわけじゃないですか?
──はい。
笹原 そうした、なかなか世間一般に振り向いてもらえない状況の中で、作り手側としてはただじっと静観したり、ビビったりしていてもしょうがないので、信じて仕掛けていくしかないと思うんですよ。そんななかで今回の万太郎vsサップというカードというのは、なかなか振り向いてもらえない世間の人達の視線を向けてもらうという意味合いが強いですね。おそらく、一般のほうの反響は大きいと思いますし、これによって放送をご覧いただく人が少しでも増えたらって思ってます。もちろん「格闘技が誤解されてしまう」という意見も理解できます。でも、たとえ誤解であっても、まずは格闘技に振り向いてもらえなければ、その誤解すら始まらないわけです。万太郎vsサップを入り口にして、青木vsアルバレスを観て、格闘技の素晴らしさに触れるかもしれない。そうしたトリガーですよね。
──“対世間”という部分が大きいんですね。
笹原 それって結局、格闘技自体に還元されていく話なんですよね。数字が上がればTBSさんの中での評価というのも上がるわけですし、ずっと放送していただけるということに繋がっていき、当然選手には安定した職場やファイトマネーに繋がっていく。もちろんそれは最終的には、場に熱が付いてお客さんに楽しんでいただくことが出口になると思うんです。そこに向かって失敗を恐れずに踏み出さなければいけないなとは常に思っていますね。
──そこには主催者側としての“正義”がある企画なわけですね?
笹原 そうです。これで試合がプロレスだといったら、まるで話が違ってきますけど、リング上に関してはリアルファイトをやるわけですから。側面の部分が今日の会見のような仕掛けなだけで、信念を曲げてやったというような話では全然ないです。

■「中身の選手は本当に強いですよ」

──過去にもPRIDEのリングで、田村潔司選手がタイガーマスクになるプランだったり、桜庭和志選手がサクマシンになって登場するプランというのもあったんですよね?
笹原 あー、懐かしいですねえ(笑)。
──主催者側としては、その過去の企画とテンションは同じなわけですか?
笹原 そうですね。お客さんに楽しんでいただくうえでいろんな見せ方があるんですよね。純粋なリング上の闘い、言うまでもなくそれが一番核となる部分なんですけど、それ以外にもたとえばオープニングの演出があったり、紹介VTRがあったり、選手の入場式があったりと、いろんな角度での楽しみ方がある。特別今までやったことがないとか、突然とんでもないことをやったというテンションでもないですけど。
──なるほど。内部的に反対意見はなかったんですか?
笹原 いや、もちろんいろんな意見はありましたよ。ただ僕が思うのは、例えばPRIDE時代にタレントの金子賢さんが試合をしたじゃないですか。あのとき、じつは僕は反対をしてたんですよ。でも、いま思うとやってよかったと思うんですね。それは当然結果が伴ったからというのもあるんですけど、単純に「やらないと変わらない」という部分があるということがわかったんですよ。あのとき、金子さんは技術的にはまだまだでしたけど、挑む姿というのは伝えられたわけじゃないですか。そういうのもやってみて初めてわかることですからね。
──ちなみに、キン肉万太郎の生みの親であるゆでたまご(嶋田隆司)先生は、今回の企画に対してどういうリアクションだったんでしょうか? ゆでたまご先生は大の格闘技ファンとしても有名ですが。
笹原 そうですね。もうPRIDE時代からずっと会場に足を運んでいただいています。あのですね、この企画で誰が一番素晴らしいかといったら、ゆで先生なんですよ。会見でも谷川さんが言ってましたけど、スーパーマンやバットマンなどのヒーロー達はやはりフィクションの世界で完結しているわけですよ。まあ、それが当たり前なんですけど(笑)。それなのに、リアルな世界に出てきて実際に総合格闘技のリングでリアルファイトをやるというのは、世界初の試みなわけですよ。万太郎というキャラクターを作り出した作者からすると、まさしく勇気が必要だったと思うんです。それでも決断をしていただけたというのは、たぶん今の格闘技界の状況というものを見て、ゆでたまご先生の中にも「もっと盛り上がってほしい」という気持ちがあると思うんですよ。逆にいえば格闘技を愛しているからこそ、キン肉万太郎というキャラが生まれたわけですから、なんらかの形で格闘技界にも還元したいという気持ちがあったのではないかなと僕は感じています。
──ゆでたまご先生は生粋の格闘技マニアという一面があるんですけど、やっぱりさきほどの会見でもおっしゃっていた「面白いこと、夢のあることを世の中に発信することがエンターテインメントに関わる人間の使命」だという感性の部分が上回ったということなんでしょうかね。
笹原 それもあるでしょうね。本当にこの企画に賛同いただけたというのは非常にありがたく思っています。なので最終的にはファンの方にも楽しんでいただいて、いい結果が出ればとは思っています。
──そして、万太郎の中身の選手についてなんですが……。
笹原 彼は本当に強いですよ。
──全日本レスリング7連覇、学生レスリング6冠と紹介されていました。
笹原 はい。キン肉万太郎というキャラを背負う以上、ポテンシャルが高くないと務まらない。彼自身もやらされているという感じではなくて、この企画をチャンスだと思って万太郎というキャラに思い切り乗っかってもらってますので、もしかしたら彼が持っているポテンシャル以上のものがリング上で発揮されるのではないかと期待しています。
──総合はデビュー戦になるわけですか?
笹原 デビュー戦です。デビュー戦でいきなりマスクを被って、サップと闘うわけですから、ハードルは非常に高いと思うんです。ただ、このハードルをなんとか超えてもらえるのではないかというのが、彼に対する主催者サイドの判断です。
──そういう意味では、企画自体がシュートですよね。
笹原 そうなんですよ! これは企画自体がガチンコなんですよ。本当にこのカードが決定するまでに主催者サイドにもさまざまなハードルがありましたし、本当にシビアで危険な企画なんですよ。この部分は会見では伝えきれてない部分ですね。だから、リング上でもそれは当然リアルファイトだし、当日のリングサイド周辺の関係者の緊張度たるやですね、ちょっと想像しただけでも吐きそうになりますね(笑)。ただ、当日はもちろん僕らがイベント全体をパッケージで演出しますので、試合順であったり見せ方であったりという部分に関しては自信を持ってやりますけどね。DJ OZMAさんもメチャクチャ盛り上げてくれるでしょうし。
──わかりました。それと、残りのカードはいつぐらいのタイミングで発表できそうですか?
笹原 そうですね。急ぎたいですね。おそらく今週の半ばあたりには発表できると思います。