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2008年3月31日

「仕返しだと思って向かってきてほしいです」
船木誠勝インタビュー

4・29『OLYMPIA DREAM.2 ミドル級グランプリ2008 開幕戦』(さいたまスーパーアリーナ)でのミドル級グランプリ1回戦で田村潔司と対戦する船木誠勝にインタビュー。田村戦への思いを語った。

■「彼が通ってきた人生は、本当に半端じゃないと思います」

――ミドル級グランプリ出場、しかも1回戦の相手は田村潔司選手に決定しました。今の心境から聞かせてください。
船木 まずトーナメントに出られるということ自体が、すごくビックリしました。「トーナメントに出てもらえませんか?」と聞かれて、「ぜひ!」とお答えさせていただきました。復帰戦(昨年大晦日『Dynamite!!』:桜庭和志戦)で全然思ったような試合ができなかったので、“次、試合に出してもらえるんだろうか?”と思っていたんですけど、トーナメントに出られる、しかも相手は田村選手。もう1回チャンスをもらえたという気持ちです。
――田村選手はかつて同じUWFに所属していた選手で、船木選手にとっては後輩に当たる選手です。
船木 自分が新日本プロレスからUWFに移籍したときは、すでに彼はUWFに入門していて、みんなと一緒に混じって練習しましたね。
――同じ1969年生まれなんですよね。
船木 ええ。で、業界では5年、自分のほうが先輩ですね、はい。でも、当時は“すごい新弟子だな”と思った記憶がありますね。それまでのいわゆる“新弟子”って感じではなく、ちょっと憶えたらデビューできそうな感じで、案の定、自分がUWFに入って2〜3ヶ月でデビューしているんですよ。それで、あるとき、本来ならば自分と前田(日明)さんが試合をする予定だったんですけど、自分が骨折してしまって、その代打で彼はデビュー数戦目で前田さんと闘ったんです。
――1989年10月のUWF札幌中島スポーツセンター大会ですね。
船木 その試合で彼は前田さんのヒザ蹴りで眼窩底を骨折して、1年近く休むことになってしまったんです。それで、一緒に病人だったときがあるんですよ。自分のほうは骨折、彼は眼窩底。それで自分は半年くらいで怪我から復帰したんですけど、彼のほうは回復までにもうちょっと掛かったんです。で、UWFが最後の頃にやっと復帰できたんですけど、復帰したと思ったらUWFは解散。そういう意味では、すごく人生を狂わせたというか、あれで彼は人生を変えたんじゃないかなと感じるんです。普通の人生じゃないというか。その後、彼が通ってきた人生というのは、本当に半端じゃないと思いますね。でも、当時は選手の数も少なかったので、一人欠けたら一人繰り上がって闘うしかなかったんです。デビューしたばっかりの選手とメインイベンターの選手が試合をすることもありえない話ではなかったんですよ。でも、結果的に、彼は自分の代わりに大怪我をしてしまった。“悪いなぁ……”と思いましたね。それでメシをおごったりしました(笑)。
――船木選手があのとき怪我をしなければ、ひょっとしたら田村選手とも肌を合わせていたのかもしれませんね。
船木 UWFがもう2~3年続いていれば、間違いなく試合をしたと思うんですけど、試合をしないまま袂を分けてしまって……。それがまたここで一緒になれたということは、なんかこれも“1回は試合をしなさい”ということなのかなと思うんです。ファンにとっても、“UWF”という括りでいえば夢のカードだったと思うんですが、ちょっと時代がズレましたけど、やっておかなくてはいけない試合なんだと思っています。
――そんな田村選手と今回闘うに当たって、船木選手はどんな気持ちで闘いますか?
船木 元々、後輩なんですけど……関係ないです。“ただの復帰2戦目の相手だ”として捉えようと思っています。
――逆に、田村選手はどんな気持ちで船木選手に立ち向かってくると思いますか?
船木 単なる獲物にしか思っていないと思いますよ。同じ団体内の先輩後輩なら結構遠慮があると思いますけど、今は違うところに所属していますからね。単なる獲物として向かってくると思います。彼が練習生時代のときは、自分のほうが明らかに強かったですから、そのときの仕返しだと思って向かってきてほしいですね。

■「正直、7年のブランクは大きいです。ただ、もう後には引かないです」

――1990年にUWFが分裂してから、田村選手の試合を見たことはありましたか?
船木 リングスのときの試合は見ていました。蹴りがうまくて、レスリングの動きが速くて、バランスがいいなと思いながら見ていましたね。
――昨年大晦日の所英男選手との試合は?
船木 見ました。あの試合はちょっと階級が違ったので、自分が闘うと考えたとき、あまり参考にならないと思います。その前の金泰泳選手との試合も見ましたけど、金選手はどちらかというと打撃の選手なので、自分とやったならばという感覚では見られないと思いますね。
――トーナメントということで、何か意識するところはありますか?
船木 正直、トーナメントという感覚はないです。仮に勝ったとしても、1回1回、違う相手と闘うだけという感覚でしょうね。とにかく、今は去年の続きがしたくてしょうがないという思いが強いんです。腕を極められて、終わって、呆然としてしまった。“まだ何もしていないのに……”という形で終わってしまったので、その続きがやりたいんです。
――田村戦に向けて何か新しい試みをしようというのは?
船木 新しく始めたのは、キックの練習です。前回は桜庭選手の蹴りでなかなか前に行けなかったので、蹴りの間合いをもう1回確認しようと。
――キックの練習はどこで?
船木 前田憲作さんのところ(チームドラゴン)です。構えとか足捌きとか、全部直されています(笑)。みんな若いですし、大きい人も多いので、スパーリングするにもちょうどいいんです。
――3月15日に行われた『DREAM.1』でのリング上で「4月のGP、責任を持って闘い抜きます」と挨拶をされましたけど、“責任”という言葉が印象的でした。
船木 最初はプロレスですけど15歳からずっとマット界にいて、新しいことを始めるといっても15歳からこの世界にいるわけですから、自分はもうこれで死んでいくしかないんです。ですので、このマット界にしっかりしたものを残していかないといけないなと感じているんです。そういう意味での“責任”を持って闘いたいなと思います。正直、7年のブランクは大きいです。ただ、もう後には引かないです。
――最後にファンへメッセージをお願いできますか?
船木 田村選手との試合は自分の中では特別な気持ちもあるんですけど、それ以上に復帰戦でできなかったことも含め、今年前に進めるかどうかの瀬戸際に立っていますので、前に進むための試合をしたいと思います。