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2011年3月28日

「なんでもアメリカ、アメリカって言われるのがムカつくんですよね」
川尻達也インタビュー

現地時間4月9日にアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴのヴァレービューカジノ・センターにて開催の『Strikeforce: Diaz vs. Daley』で、ギルバート・メレンデスの保持するストライクフォース世界ライト級に挑戦する川尻達也。大一番に臨む川尻が意気込みを語った。
【取材日:2011年3月9日】

■「いやもう……不安が大きいかなって感じです」

──メレンデス選手の保持するストライクフォース世界ライト級王座への挑戦が決定しました。決定したときはどんなことを思いましたか?
川尻 やっと決まったなって感じでしたね。大晦日が終わった時点でそういう流れになっていたから、次はメレンデスだろうなとは思っていたので。当初は3月5日だって噂があったから、3月5日に向けて1月4日から練習を開始しちゃったので、もっと休めばよかったなとは思いますけど(笑)。まあ、僕は元々、自分から海外で闘いたいとか、アメリカで闘いたいという気持ちはなかった人間なんです。それがこういう自分からアメリカで闘いたいと思える心境になっているというのは、世界はアメリカで結果を出さないと認めないという、日本だけでやっていたんじゃ盛り上がらないという状況をこれまで以上に感じているというのがあると思います。去年の4月から向こうに行ってみたいと思っている中で試合が決まった上に、しかもタイトルマッチになったというのは、タイミング的にはほんとベストなんじゃないかなと思いますね。
──昨年は青木選手とのタイトルマッチがあって、大晦日のトムソン戦に勝利。そして今年一発目はストライクフォースでメレンデス選手とタイトルマッチ。目まぐるしい流れですよね。
川尻 トムソン戦のときも思いましたけど、恵まれていますよね。年齢も年齢だし、残りの格闘技人生はそこまで長くはないと思うので、最後のヤマ場に来ているんじゃないかと。これからはもうぬるい試合はないと思うし、僕もやる必要はないなと思っているので、ありがたいですよね、こういう強い選手と連続でできるっていうのは。特に今の日本の格闘技界で強い相手とだけ組んでもらえるって、望んでいても難しいことですからね。凄く恵まれていると思うし、ありがたいなって思います。
──今日でちょうど1ヵ月前になりますが、現在の心境としてはどうですか?
川尻 いやもう……不安が大きいかなって感じです(苦笑)。初めてのことづくしで、アメリカ、金網、5ラウンド。不安は大きいですけど、それ以上に、そういった不安の中で結果を出したいという気持ちのほうが大きいです。不安だからこそやり甲斐があるというか、ここでもうワンランク上に行けるんじゃないかというのもありますね。
──アメリカ、金網、5ラウンド。全部ひっくるめて一つの不安になっていると思うんですけど、強いて挙げるなら何が一番不安に感じていますか?
川尻 アメリカっすね。今まで日本でしか試合をしたことなかったので、まったく言葉も通じない中で、これまでと同じような調整ができるのかなっていう。多分、できるとは思うんですけど、そういう危機感はあって、逆に敢えてその危機感は持っていたいとも思うんですよね。楽観的には考えないようにしているんです。
──敢えて楽観的にはならないようにしていると。
川尻 「試合が楽しみ!」ってテンションだとすぐ楽観的になり過ぎちゃって、「金網なんて大丈夫だろ」とか「メレンデスなんてそんな強くねえだろ」とか、そう思っちゃうと思うんですよね。去年までは「なんとかなるだろう」とか「あいつなんかに負けねえよ」とか楽観的に考えて試合していて、いろんなプレッシャーがある中で、それを「背負う」と言いつつも、わざとあんまり気にしないようにしていたんです。プレッシャーを真正面から受け止めないで、気楽に試合をしていたというか。でも、ずっとそうやって闘ってきて、(去年の)7月に負けて、やっぱり青木真也が今までいろいろなものを背負って闘ってきたという凄さというのを感じたんですよね。だから、僕もそれから逃げずに全部のプレッシャーを受け止めて闘おうと思って。大晦日のトムソン戦は全部のプレッシャーを受け止めて闘ったんですけど、今回もあまり楽観的には考えたくない。だから、今は敢えて危機感を持つようにしているんです。

■「関係者も思いきった判断をしましたよね」

──トムソン戦って言葉が出ましたけど、昨年大晦日のトムソン戦というのは今振り返ってどのような感想を持たれていますか?
川尻 つまらない試合だったなっていう(苦笑)。でも、その試合に勝ったから今回のメレンデス戦に繋がったというのは間違いなくあって、もちろんそのときは必死だったからメレンデスのことは考えてなかったですけど、勝ててよかったなって。勝ててなかったら、それこそ何もいいことなかったんだろうなって思いますよね。日本でなかなかメジャーイベントが行われない中で話題らしい話題というのはなかったのかなとも思うので、僕も良かったし、ファンにとっても良いことなんじゃないかなと思います。
──トムソン戦の勝利というのは、メレンデス戦に向けて自信にはなりましたか?
川尻 あんまり関係ないですね。DREAMのリングでメレンデスと闘うというのであれば自信になったと思うんですけど、まったく環境が違う中での試合ですからね。
──メレンデス選手とはかつて、06年大晦日の『PRIDE男祭り2006』で激突しました。そのときに受けたメレンデス選手の印象というのはどういった感じだったんですか?
川尻 いや〜もう、しつこいなって感じですよね。「しつこいな〜、こいつ!」と思って「俺も負けてらんねえ!」っていうか。お互い引っ張りあってああいう試合になったんじゃないかと思いますね。お互いが「絶対に負けたくねえ!」と思って。とにかく意地だけでしたね。
──09年8月には石田光洋選手のセコンドとして現地でメレンデス選手を見て、昨年4月の青木選手との試合も映像でご覧になったと思うんですけど、かつて対戦したときと比較して、その違いというのはどこにあると感じていますか?
川尻 賢くなってますよね。ストップ&ゴーができるようになって、その場その場で冷静に判断している印象です。前はほんとにただ前に行くだけという感じだったんですけど、今はしっかり止まるべきときは止まって、そこからまた攻撃できるというか、呼吸を置くようになったというか、考えるようになったと思います。
──初めてのケージでの試合ということについてはどうですか?
川尻 ケージで闘うことは去年からイメージしているので、秋山(成勲)さんのところで練習したりもしているし、ある程度イメージはしているんですけど、実際に入ってみないとどういう感じになるのか分からないので、むしろ考えすぎていつも通り動けなくなるほうが問題だと思っています。イメージするのはいいけど、「こういうときはこうしなきゃ!」とか考え過ぎちゃって、普段通りの自分が出せなくなるのは避けたいと思っています。
──近年、日本人選手がなかなかアメリカで結果を残せない中、川尻選手に対するファンや関係者の期待は大きいです。
川尻 関係者も思いきった判断をしましたよね。僕がメレンデスと試合するだけでなく、DREAMの現役チャンピオンも試合をするわけだから、相当な覚悟だったと思うので、その期待には応えたいなとは思います。あと、それもそうなんですけど、なんでもアメリカ、アメリカって言われるのがムカつくんですよね。例えば、練習方法もアメリカがやっているようなことがいいとか、なんでもかんでもアメリカのほうが凄いって言われるのがほんとムカつく。なら僕なりのやり方で結果出してやるっていう。戦闘機に竹槍でつっかかっていくように見られるかもしれないけど、竹槍で勝っちゃうみたいな。「ふざけんな、バカ。竹槍で勝ってやるぜ」って感じです。そこのモチベーションが一番高いですね。「絶対に勝ちます!」って言えるほど簡単な相手じゃないし、不利なのは間違いないですけど、なんとしてでも勝てるように強い気持ちで臨みたいと思います。なんとしても勝ちたいです、はい。