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2008年12月15日

夢の対決か、因縁の決戦か? 両者に聞いた桜庭和志vs田村潔司という一戦の意味。[PART.1/桜庭和志編]

12・31『FieLDS Dynamite!! 〜勇気のチカラ 2008〜』(さいたまスーパーアリーナ)でついに実現する桜庭和志vs田村潔司の一戦。夢の対決か、因縁の決戦か、それとも……? この対戦が決定してから数週間が経過した、現在の心境を両者に語ってもらった。今回はPART.1/桜庭和志編です。【聞き手:井上崇宏(THE PEHLWANS)】

■「格闘家は試合をするのが仕事だと思う」

──まだまだ各メディアの取材はあるんですか?
桜庭 いや、もうないはずですよ。もうね、面倒くさい……。
──えっと、今回はですねオフィシャルサイト用のインタビューなんですけど。
桜庭 いま、僕が「面倒くさい」って言ったのをあっさりスカしましたね?
──はい? あっ、この取材も面倒くさいんですか?(笑)。
桜庭 ええ、とっても面倒くさいです(笑)。
──それはすいません(笑)。まず、田村選手が今回対戦を受けた理由は「流れだ」とおっしゃってましたよね。
桜庭 言ってましたね。

──そこで今日は桜庭和志の「流れ」についてお話をしたいなと思っているんですけど。ここまで各専門誌の誌面等で盛り上がっているのが「Uインターでの先輩後輩時代の関係」という部分で、お二人の過去の因縁が取り沙汰されていますよね。でも僕はこの一戦のテーマをそこに持っていくことに少し違和感を持ってるんですね。
桜庭 まずそれはね、僕が会見で言った「時間無制限・素手で」という提案からきてるんですよね。
──ええ。この流れはほかでもない桜庭さんのせいですよ(笑)。
桜庭 はい(笑)。
──そもそも「時間無制限・素手」ルールっていうのは非常に現実的じゃないわけじゃないですか。
桜庭 はいはい。
──でも、そこでなんでそういうことを言ったのかというと、「ほら、わがままを言われる気分ってどうですか? 最悪でしょ?」というニュアンスのアピールだったように思うんですね。
桜庭 まあ、そういう気持ちですよね(笑)。それと正直、これまでPRIDEの時もさんざん対戦をスカしてきておいて、今回やるぞってなった時にどれだけの覚悟があるのかを知りたかったというのもありました。でもそこで「顔面もアリなの?」って聞いてきたじゃないですか? あれで覚悟がなかったように感じましたね。
──たとえ素手でも、顔面ナシなら通常のルールよりソフトだろう、っていう(笑)。
桜庭 そうそう(笑)。だから「最近、初期UFCの頃のような緊張感がなくなってきているように感じる」とか言いましたけど、あれも全部あと付けですからね。
──あと付けですよね。
桜庭 そうです。すべてあと付けです。あの会見の流れで、専門誌とかのインタビューもあのままのノリで答えちゃいましたね。正直言って、Uインターの時の確執なんか何もないしどうだっていいんですよ。ボクが一番違和感を覚えたのは、PRIDEの頃ですからね。
──以前もそうおっしゃってましたよね。その違和感っていうのは今回の田村選手に限らず、普段ほかの格闘家に対しても「そういうやり方っておかしいんじゃないか?」っていうことを感じたりすることってあります?
桜庭 ありますね、いっぱい。いますぐにはパッと思い出せないけど。
──たとえば、試合で反則をおかした選手がそのことをきっかけに逆に商品価値を高めちゃったりとか。
桜庭 ああ。そういう部分はおかしいですよね。面白けりゃいいっていうか、人間の野次馬根性みたいな部分を利用して盛り上げるというのは、ちょっとおかしいんじゃないかなと思います。人ん家が燃えてて、「うわぁ〜、すげえ! 火事だ火事だ!!」ってみんなが集まってくる心理を利用するっていうのはちょっと、ね。
──ズバリ言うと、見る側からすると「面白けりゃいい」っていう部分も確かにあるんです。
桜庭 それはわかりますよ。
──ただ、それがあまりにも見えすいた感じだと逆に引いちゃうんですよね。
桜庭 うんうん。だからプロって計算することも大事だと思うんですよ。それが本当に緻密に計算されているものであれば全然かまわない。だけど、計算している部分がすごく見えるじゃないですか? わかりますよね?
──ええ。
桜庭 それは僕だけじゃなくて、周りの人がみんな感じていることであって。「それを誰が言う?」ってなったら、やっぱり今回はやる本人である僕が言わないと。
──だからここに来て桜庭和志のマット界での役割っていうものを、「ファイターの闘う環境の正常化」という部分をテーマとして設定してきたのかなあって思ったんですね。あと付けですけど(笑)。
桜庭 あ〜(笑)。そういうつもりもあまりないんですけどねぇ。ただ、やっぱり青木(真也)君が怒ってるのもわかるし、一生懸命試合をして一つ一つ結果を残していけばいいと思うんですけど……。
──ようは「ちゃんと正規のルートを通って上がっていこうよ」という。
桜庭 そうですね。あのー、「頑固」っていうのと「わがまま」っていうのは違うと思うんですよ。若い頃は僕はまだそういうことがわからなかったので、毎日一生懸命練習をしとけばいいやって感じで生きてたんですけど、いろいろと経験をするなかでこう昔のことを振り返ってみると「あれって頑固なんじゃなくて、単なるわがままなんじゃないかな?」っていう感じはありましたね。やっぱり格闘家は試合をするのが仕事だと思いますから。

■「一生懸命がんばった人間が馬鹿を見るのはおかしい」

──田村戦といえば、Uインターでの3連戦についてなんですが。
桜庭 はい。
──まず、あそこで桜庭さんが田村選手を仕留めることができなかった。
桜庭 あー! ごめんなさい! ごめんなさい!(笑)。
──ここで僕に平謝りしないでください(笑)。あそこで一介の若手レスラーに過ぎなかった桜庭和志が田村潔司を倒していたら、また状況も大きく変わってましたよね。
桜庭 まあ、それはあると思いますね(笑)。
──そのことに後悔の念というか、責任を感じたりはしてるんですか?
桜庭 責任!? 「腹を切れ!」みたいな感じ? 
──いえ、ただ言ってみただけです(笑)。
桜庭 だってそんなの、若かったんだからしょうがないじゃないですかぁ! こないだもある若い選手から「Uインターでの試合を観ましたけど、あのスリーパー、本当に入ってるんですね」って言われちゃいましたから……(笑)。
──2戦目の時ですね。
桜庭 「ただ、いまだったらあんなスリーパーの入り方しねえよなぁ」って。そういう技術がちゃんとわかってなかったし。でも違う! あれはですよ、そもそもロープエスケープルールというのがおかしいんですよ! エスケープするっていうことは、1回ギブアップをしたってことじゃないですか? エスケープルールというのはおかしいと思うんだよなぁ、ホントに……。
──さっきの話に戻りますけど、桜庭さんはUインター時代の確執で怒っているわけじゃない、と。
桜庭 ええ。
──PRIDEの頃からの田村選手の格闘家としての姿勢に対して「それはいかがなものか?」と言いたいんだと。
桜庭 はい。
──その主張にはやっぱり、かつて同じ業界の先輩後輩の間柄だったという部分も少しは関係してくるんですか?
桜庭 うーん……いや、いまちょっと引っかかったんですけど、「同じ業界」というのは違うんじゃないかなぁ。
──何が違います?
桜庭 違うじゃないですか、「同じ業界」というのは。たまたまあの頃はプロレスの業界と総合格闘技、真剣勝負の業界がわりとごっちゃになってたから「同じ業界」って言うと思うんですけど、たぶん「違う業界」だと思いますよ。同じトシでも先に入ったほうが先輩になるのはわかります。だけど、田村さんは僕より4年早く入ったけども、僕はその4年間を遊んで暮らしていたわけではないですから。大学に入ってレスリング部でちゃんと練習してましたし、試合で真剣勝負をしてました。一生懸命自分のやることをやってきたというのがありますから。
──なるほど。そのプロレスと総合格闘技がごちゃ混ぜになっていた時期に飛び出してきたのが桜庭和志という選手ですよね。
桜庭 ええ。
──だからこそ、桜庭さんの田村選手に対する思いのなかには、ほかの世代にはなかなか共感してもらえないストレスというのも含まれてるんだと思うんですね。でも、その部分にあえて向き合うことで、こういう種類のストレスは自分達の世代で解消させておきたいという気持ちもあるんじゃないですか?
桜庭 ……一生懸命がんばった人間が馬鹿を見る、そういうのはおかしいです。
──ただ、そのセリフも桜庭さんが言うことだから耳を傾けられるんであって、僕も普段は「いや、面白けりゃ何でもアリだろ!」って思っちゃうタイプなんですね(笑)。「一生懸命がんばった人間が馬鹿を見るのはおかしい」という主張をそのへんの選手にされたとしてもおいそれと同意はできない部分もあるんです。
桜庭 そうですか?
──ええ。だからやっぱり今回の一戦は桜庭和志にしか言えないこと、表現できないことっていうものが確実にあるんだなと思います。
桜庭 今回の試合、どっちが勝つか負けるかはわからないですけど、たとえば「一生懸命やってきたんだぞ」と自分で思っているほうの人間が負けても、それはただ単にその人間にその相手が試合で勝ったというだけのことで、一生懸命やってきた人間がコツコツ積み重ねてきた部分、その部分の全部を持っていけると思ったらそれは違うと思うんですよ。それは悪い意味での“昔の”プロレス的な発想だと思うんです。僕は勝とうが負けようが試合をします。勝とうが負けようがいい試合をすることがプロの格闘家という仕事だと思ってますから。
──ただ、勝ちにはこだわりますよね。
桜庭 それは一応勝ちには行きます。試合は勝ちに行くから面白いんであってね。