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2010年8月3日

「人生を懸けて格闘技をやっているので、その証拠としてベルトが欲しい」
水野竜也インタビュー

7・10『DREAM.15』(さいたまスーパーアリーナ)で行われたライトヘビー級王座挑戦者決定戦でメルヴィン・マヌーフを破った水野竜也にインタビュー。見事な一本勝ちを収めたマヌーフ戦、そして9・25『DREAM.16』(日本ガイシホール)でDREAMライトヘビー級王座を懸け対戦するゲガール・ムサシについても語ってもらった。【取材日:2010年7月11日】

■「家に帰って映像を見たときビックリしました」

──昨夜は見事な勝利でした! 2年半ぶりのDREAMでの試合だったわけですが、会場入りしたときに戻ってきたというような気持ちはありましたか?
水野 『DREAM.1』のときは会場に呑まれていて何も周りが見えてなかったので、あまり記憶がないんです。だから、戻ってきたというよりは、新しいところに来たって感じでした。
──試合前、リングチェックをすごく入念されていましたよね。
水野 マット(・ヒューム)先生というのはすごく練習好きなんですけど、リングの上で練習が始まっちゃったんです(笑)。「ここはこうだ」と本当に練習が始まっちゃって、でもそのおかげで試合では動けたので結果オーライですね。
──リング上では落ち着いているように見えました。
水野 リングに上がったら緊張はありませんでした。その前までは控え室で自分の集中力が途切れるのがすごく怖くて、とにかく集中するのに必死でした。ずっとイメージトレーニングですよね。自分の中で強く、勝つことだけをイメージしていました。負けることをイメージするとどんどん膨らんでいって怖くなってしまうので、「勝てる、勝てる」って強く思っていました。
──青木選手が「メルヴィンと対面した時点ですごい」ということを言っていたのですが、マヌーフ選手と対峙した瞬間はどう感じたんですか?
水野 リングに上がったときは自分もテンションを上げていたのでそんなに感じるところはなかったんですけど、家に帰って映像を見たときに「よくこんなのと闘ってたな!」ってビックリしました(笑)。入場してくるときのテンションとかヤバイじゃないですか?
──ヤバイですよね(笑)。
水野 ほんと自分にビックリしました。でも、リング上ではパンチもらっても「大丈夫。まだいける」って思えていましたし、冷静でいられたと思います。それでも喰らってましたけどね(笑)。
──一回、グラついた瞬間がありましたよね。
水野 ありました。映像を見たら、そのパンチを喰らった後に覚えてない動きを自分がしていたので、ちょっと飛んでいたんでしょうね。でも、飛んでいてもそれなりに対処していたので、それは練習の賜だったと思います。
──打たれ強いですよね。その瞬間もすぐに立て直していました。
水野 そこはもらう覚悟があるかないかだと思っているんです。パンクラス時代にチアゴ・シウバ選手とやらせてもらったときに、最初は良かったんですけど、後半になって「あと何分だろう? もう我慢できない…」って思った瞬間に体の中のスイッチがパッと切れちゃったんです。そうしたら、それまで耐えられていたパンチなのに、自分の気持ちが逃げに走った途端、すぐに気絶しちゃったんです。その試合から、気持ちというのがすごい重要だと思うようになったんです。マヌーフ選手のパンチは速くて重かったんですけど、それはもう分かっていたことですし、もらってなんぼだという覚悟で臨んだので凌げたんだと思います。
──試合にはどんなフィニッシュのイメージを持って臨んだんですか?
水野 3つほど用意していたんですけど、なかなか作戦通りにはいかなかったですね。本当はマヌーフ選手がもうちょっと立ってくると思っていたんです。倒してもどんどん立ってくると思ったので、背中を見せた瞬間にバックを取ってチョークというのを練習していたんですけど、なかなか立つ仕草も見せてこなかったので、腕絡みに行ったと。そういう感じでしたね。
──ディティールの違いはあっても、トータルで言えば、イメージした展開に近いですか?
水野 そうですね。テイクダウンも取れたし、ポジションも取れましたし。あと、マヌーフ選手って3分過ぎにバテるというか、一気にガクンと落ちるんですよね。そこはチャンスだと思っていて、3分過ぎくらいにマヌーフ選手の顔を見たら、目が動揺しているというか、セコンドのほうをチラチラ見て「どうしたらいいんだ?」って感じに見えたので、「あっ、これは迷っている」と。そのとき自分はまだまだ疲れていなかったので、「これはイケる!」と思って攻め続けました。
──戦前、気持ちの見える試合をしたいということをおっしゃっていました。
水野 いろいろ課題があるので100点ではないですけど、気持ちの部分は少しは見せられたんじゃないかなと思います。

■「まぐれでもいいから、とにかくなんでもいいから勝ちたいです」

──9・25『DREAM.16』(日本ガイシホール)で行われるDREAMライトヘビー級王者決定戦、相手はゲガール・ムサシ選手に決定しました。ムサシ選手の印象は?
水野 すごく気持ちの強い選手だと思います。なぜそう思うのかというと、常に冷静だからです。自分は強いという自信があるから、常に冷静さを保てると思うんです。で、本当にめちゃくちゃ強い。そのことは結果が証明していますよね。気持ちの勝負というよりは、丁寧に丁寧に試合を組み立てていかないといけないと思います。雑に入ったらキュッで終わりだと思うので、雑にならないような練習をしていきたいと思います。マット先生とムサシ選手の映像を見て研究して、必ず人間だから弱い部分はあると思うので、そこを突いていけたらチャンスはあるんじゃないかと思います。アメリカで練習するようになって思ったのは、どんなに何連勝していて強くても絶対に弱いところはある、ということなんです。フィジカルは人種が違うんで変わってくるところはあるんですけど、絶対にパーフェクトな人っていないと思うんですよ。例えば、心が弱かったり、テイクダウンが弱かったり、関節技に弱かったり。強いところもあるけど、必ず弱いところもある。そこを探れるか探れないかだと思います。その弱いところを探して突いていけば、どんな選手と闘ってもチャンスがある。それが総合格闘技だと思っているんです。相手がムサシ選手であろうとあまり臆することもなく……って、練習のほうが怖いですからね(笑)。
──マット先生の指導はよっぽどなんですね(笑)。そう言えば昨日、一緒にマット先生のところに行った西浦“ウィッキー”聡生選手も大喜びしていましたね。
水野 そうですね(笑)。昨日は控え室にマッハさんがいて長南(亮)さんがいてウィッキーがいて白井祐矢がいてって、すごい面々がついていてくれたので、すごく心強かったです。自分が考えているときも、肩揉んでくれたりいろいろやってくれて、本当にありがたかったです。
──アドバイスとかもあったんですか?
水野 試合直前は集中していたのでなかったんですけど、試合前はみんなアドバイスしてくれましたね。みんな一人一人違うことを言ってくれました(笑)。
──ハッハハハハ!
水野 マッハさんはこうがいい、ウィッキーはあれがいいって(笑)。結局、練習したことしか出せないので、みんなからもらったアドバイスを気を付けつつ、練習したことを出そうと思いました。本当にいろいろな人に恵まれました。感謝の気持ちを忘れずに、次も頑張っていきたいと思います。
──最後に改めて『DREAM.16』ライトヘビー級王者決定戦に向けての意気込みを聞かせてください。
水野 ベルト欲しいです、はい。もうどんな形でもいいから勝ちたいです。例えば、自分が蹴ってちょっと変な形で当たって相手が骨折しちゃって試合が止まるとか、テイクダウンしたら相手が頭打って失神しちゃったりとか、そんな勝ち方でもいいです。格好良くじゃなくていいから、まぐれでもいいから、とにかくなんでもいいから勝ちたいです。そのまぐれを引っ張ってこれるのは、練習しかないと思っています。ベルトを獲ったら人生変わると思います。自分の人生を変えるために格闘技をやっているし、人生を懸けて格闘技をやっているので、その証拠としてベルトが欲しいです。そのことはリアルに考えています。昨日は本当にご声援ありがとうございました。9月に向けて一生懸命トレーニングしてきます。またぜひ応援よろしくお願いします。