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2010年4月21日

「若干勢いで行っちゃうというところが日本の面白いところ」
長南亮インタビュー

3・22『DREAM.13』(横浜アリーナ)で行われたウェルター級ワンマッチでアンドリュース・ナカハラに勝利した長南亮にインタビュー。DREAM初参戦の感想、そして気になる今後についても語ってもらった。【取材日:2010年4月6日】

■「自分、一本勝ちより判定勝ちのほうが好きなんです」

──DREAM初参戦となった『DREAM.13』のアンドリュース・ナカハラ戦は見事な勝利でした。ゆっくりとそのアンドリュース戦について振り返っていただこうと思ったのですが、4・25『ASTRA』チャ・ジョンファン戦が緊急決定。今はその一戦に向けての練習中なんですよね。
長南 そうですね。なんか大変なスケジュールになっています(笑)。
──その一戦に向けてのお話も後ほど聞かせていただければと思うのですが、まずはDREAM初参戦、その感想からお願いします。
長南 昔一緒にやっていたスタッフや選手がいましたし、懐かしさはありましたよね。雰囲気も(PRIDE)武士道のときと一緒でしたし。試合までのいろいろなチェックだったり、会場も横浜アリーナで何回も足を運んでいる会場ですから、戸惑うところは何もなかったです。あとまあ、最初の入場式のときに感じたのが、「あっ、(自分は)外敵だな」みたいな(笑)。
──えっ、それは意外です。
長南 自分が初めて武士道に出たときってのは割と声援で迎えてもらえたんですけど、今回はアンドリュースのほうが声援が大きかったんですよね(笑)。あっちはDREAMで何戦かやっていてそれなりに声援があるのも分かるんですけど、自分が出てきたら、UFCから来たっていうのがあるのか「長南? なんぼのもんじゃ!」という感じの声援だったので、「随分人気ねえなぁ、オレは」って思って(笑)。
──でも、そうやってファンの反応を感じていたということは、めちゃくちゃ冷静だったんですね。
長南 あの日はめちゃ冷静でした。しかも4試合目ってのがすごいやりやすかったんですよね。ほどよい感じで。
──ほどよいというのは?
長南 会場に着いてから、ちょっと休憩して、着替えてアップして、ちょっと落ち着いたところで試合だったので、特に待つわけでもなく焦るわけでもなく、ほどよい状態で試合を迎えられたんですよ。第4試合というのは最高の試合順なんじゃないかなと思いましたね。待ちがないっていうのはやりやすいです。
──対戦相手のアンドリュース・ナカハラ選手はいかがでしたか?
長南 結果論になっちゃうかもしれないんですけど、計量のときに「あっ、いけそうだな」っていうのは感じたんですよね、向かい合ったときに。
──それは雰囲気というか佇まいから?
長南 ですね。
──そういうのを感じるのは今回に限らず?
長南 限らず。過去の経験で言うと、ビビッたわけじゃないんですけど、ダンヘン(ダン・ヘンダーソン)とやったときというのは、「なんでこんなデカいんだ!」というちょっとヤバそうな雰囲気というのを感じたこともありましたし……なんなんですかね? 近くでパッと見たときの体つきとか顔つきとか、そういうところから感じるところがあるんですよね。「これはいけるな」とか。なんかうまく説明できないんですけど、そういうのがあるんです。
──試合前に「自分は彼の得意な打撃でもいいし、やり合える自信もある」とおっしゃっていましたが、1Rからどんどん前に出てプレッシャーを与えていきましたよね。
長南 要は“間合いの勝負”だと思っていたんです。今までアンドリュースと闘った選手たちというのは、割と相手の蹴りの間合いで構えていたんですよね。そこにちょっと気付いたんで、その間合いをちょっとずらしたり、動いたりしたらどうなるのかなと思っていたんです。あと、パンチにどれだけ対応できるのかというところがこれまでの試合からは分からなかったので、そこもちょっとやってみる価値はあるなと。そういったところを集中してキックボクシングのジムで練習して、そうしたら思った通りだったという感じでしたね。
──結果的には全局面で優位に立ちました。
長南 そうですね。一回、変なラッシュが来たんですけど、そこまで効かなかったですし。よけづらいというか予測不能なラッシュだったので、ちょっと面喰らっちゃったんですけど、あれも大丈夫でした。
──その2R中盤のアンドリュース選手のラッシュの後、テイクダウンに成功しました。
長南 向こうは勢いに乗っていたんで、これはもうテイクダウンするしかねえなと。一回目のシングルに行ったときに、一瞬ロープを掴まれているんですよね。そこで取れていたと思うんですけど、仕方ねえなと仕切り直しに行ったらヒザ蹴りもらって、でもそれもそんなに効かなかったんで落ち着いてテイクダウンすることができました。まあでも、もったいないなとも思いますよね。
──「もったいない」というのはナカハラ選手が、ということですか?
長南 ええ。極真の世界チャンピオンになるくらいの根性とか、肉体的なものはあるんで、もうちょっとうまい具合に練習したりとか、総合にアジャストしていって経験積めば、もっと脅威を与えられる選手になるんじゃないかと思いましたね。
──「アンドリュースは高いポテンシャルを持っている」と言う関係者は多いですよね。
長南 肉体的にはそうでしょうね。だから、今回もそうだったと思うんですけどいろいろ悔しい思いとかもしながら、自分で考えて、必要なものを身に付けていったほうがいいんじゃないですかね。なぜなら、正直、彼がやっていたことは、技術的に二、三歩古いんですよ。自分はそこらへんは最前線でやってきたので、そういうところの差が出たのかなと思いますね。
──長南選手自身は何か課題とかは見つかったんですか?
長南 自分の課題としては、フィニッシュすればよかったなというところですね。殴るほうに頭が行っちゃって、極めるというところにあまり行かなかったというか。ビデオを見ると、「なんでここで極めないんだよ!」ってところがいっぱいあるんですよね。サイドを取ったときとかも、もうちょっと丁寧に行けばよかったなという場面もありましたし。でも自分、一本勝ちより判定勝ちのほうが好きなんですけどね。
──えっ、そうなんですか?
長南 というのも、アンデウソンとやったとき、散々殴られて、その後、一本で勝ったじゃないですか。
──04年大晦日『PRIDE 男祭り 2004 -SADAME-』のアンデウソン・シウバ戦ですね。最後はヒールホールドで長南選手が一本勝ちしました。
長南 あれが悔しくて悔しくて。
──な、なんでですか!?(笑)。
長南 「あんなに殴られて、これで終わりかよ!」って(笑)。そのときから、“闘い”という面では、ボコボコにしてやったほうが勝ちだなと思うようになったんです。ドロドロと闘ったほうが、自分としては実感あるんですよ(笑)。フルラウンドやったほうが疲れるし、体にいろいろ負担も掛かりますから。だから、練習では一本取ったりするんですけど、試合になると一本取りに行こうという意識が薄いんですよね。パウンドで倒せるのが一番いいんですけど、レベルが高くなってくるとそんなにポンポン顔にパンチもらってくれる相手はいなくなりますからね。もうちょっと余裕を持って、極めるってとこまで考えてもいいのかなというのはあります。そのほうが、自己満足はあまりできないにしても、世間的評価は上がるのかなという。

■「福田力からベルトを獲ればTeam M.A.Dの全員がチャンピオンになる」

──今後についてお伺いしようかと思うのですが、冒頭でも出ましたが、まずは4・25『ASTRA』日本武道館大会でのチャ・ジョンファン戦ですよね。
長南 それはもう、最低勝ちというのが絶対条件ですよね。しっかり体調を管理して、気を抜かないように油断しないようにしながら、絶対に勝ちます。
──プロデビューされてからこれだけ短いスパンでの試合というのは?
長南 初めてですね。
──コンディションは大丈夫なんですか?
長南 試合が終わってからの1~2週間というのは最悪というか、減量とかで相当体力使っちゃったので、試合終わったら疲れがドッと押し寄せてきちゃったんですよね。幸いダメージは拳だけでさほど怪我とかはなかったんですけど、ただ疲れがすごいっていうのと、力が出ないっていう。「ほんとに試合できんのか?」っていう状態だったんですけど、それでもやんなきゃいけないって毎日コツコツやっていたら段々と戻ってきたかなっていう感じですね、今は。
──このタイミングで試合を受けたというのは、やはり吉田秀彦選手の引退に華を添えるためというか。
長南 そうですね。無名の韓国人選手と闘いたいって気持ちは一切なかったんで、それだけです。あまりコンディションがよくない状況でも、やっぱり吉田さんの最後なので一緒に何かやりたいという気持ちですよね。
──長南選手にとって吉田選手というのはどのような存在なんですか?
長南 よき先輩であり、友人みたいに接するときもありますし……まあだから、面白い人です(笑)。「尊敬する!!」とかそんなんじゃなくて、どっちかというと、いろいろと楽しめる人という感じですね。業界を引っ張ってきた人でもあるし、だから最後の大会は盛り上がってほしいし、そういう一つの力になれればなと思っています。
──その『ASTRA』の後……というのは、なかなか答えづらいとは思うのですが。
長南 その後は、次の試合まではスパンが空くと思うので少し休んで、あとはもう、DREAMで相手となるような選手が見えてくれば、(アンドレ・)ガウヴァオンでもいいし(マリウス・)ザロムスキーでもいいし、誰でも来いって感じですね。ストライクフォースの選手とってことになれば、ニック・ディアスかジェイ(・ヒエロン)かって話になるでしょうし。あっ、あと、ちゃんと間隔を空けて試合ができるんであれば、70キロでやってもいいかなというのもあるんです。ストライクフォースで言ったら、(ギルバート・)メレンデスがチャンピオンでジョシュ・トムソンとかもいますからね。
──ライト級での試合も視野に入れているんですか!?
長南 アメリカでやってきて感じたのは、77でやるとなるとリーチとか体格の違いが大きいので、無理して77とかにこだわらなくても、70まで落とせば自分も同じくらいのリーチで闘えるだろうなってことなんですよ。体重軽くなる分、もっと動けると思いますし、よりハイレベルな闘いができるのかなっていうのはあります。今の体重がベストかなと思うんですけど、もうちょっと落とせるかなって思いますし、対アメリカってことを考えたら、70でもいいのかなという。70って言ったら、自分が中学生くらいの頃の体重ですけどね(笑)。
──ちなみに、普段は何キロくらいなんですか?
長南 普段は83~84キロくらいで、試合時は82キロくらいまで戻っていますね。70だったら、14キロくらい落とすことになりますね。まあ、このくらいから70まで落とす選手はザラにいますし、自分が体重コントロールを始めたのはUFCで闘うようになってからなんで、まだ完璧に自分に適した減量システムが把握できていないところがあるので、もうちょっと勉強してやっていけば楽に行けるんじゃないかなと思います。
──そういった長南選手の発言、そして今回のアンドリュース戦完勝もそうですし、1月の『DEEP45』では白井祐矢選手がDEEPウェルター級王者になって、2月の『DEEP46』では中西良行選手がライトヘビー級トーナメント1回戦を突破して、なんかTeam M.A.Dの勢いっていうのを感じます。
長南 中西が今回のトーナメントに優勝すれば、ウチに2人チャンピオンがいることになるんで(※このインタビュー後、4月17日の『DEEP47』で中西はDEEPライトヘビー級王座に戴冠)、そうしたら自分が福田力からベルトを獲れば3人全員チャンピオンになるんで、そこを目指したいですね。
──ちょ、ちょっと待ってください! 福田選手はDEEPミドル級王者ですよ!
長南 84ですね。
──70キロも視野に入れて、84キロでの試合も! すっごい振り幅ですね!
長南 ですね(笑)。でも、そういうところが日本の面白いところかなって思うんですよ。日本の場合、競技のほうにあまり寄ってなくて、若干勢いで行っちゃうというところが面白いと思うんですよね。
──いや~、驚きました! 今後の活躍にもの凄く期待しています!!
長南 ということで新参者なんですけど、皆さん、よろしくお願いします(笑)。